『灰の記憶』
消し去ってしまいたい記憶がある
忘れてしまいたいのに
それは叶わない
思い出すたびに 息ができなくなる
少し思い出話をしよう
私がまだ当主になる前
共に修行をしていた霧人と言う男がいた
兄でした
私は霧人兄さんと呼んでいた
強くて優しくて 大好きだった
私には兄弟がいなかったから
優しくしてくれる霧人兄さんを慕っていた
憧れだったのか 恋というものだったのか
今ではもうよく分からない
兄さんは病を抱えた妹のために
毎日修行と仕事に明け暮れていた
そんな兄さんに私はある日ひどいことを言ってしまったんだ
霧人兄さん
あ…あ
最近顔色がよくありませんね
大丈夫だよ
大丈夫じゃありません
妹に比べたら、辛いことなんて何もないよ
兄さんは妹さんのことばかり
千代、どうしたんだ
あたしが本当の妹なら、兄さんにこんなに迷惑かけないのに
千代…
申し訳ありません、私…頭を冷やしてきます
その翌日から兄さんは道場に来なくなった
私は後悔した
私は兄さんの妹に嫉妬していたんだ
そんなつまらない理由で
兄さんと妹さんを傷つけってしまった
一ヶ月が経った頃
霧人兄さんは再び道場に顔を出すようになった
霧人兄さん
ああ、千代か、元気だったか
あ、はい。あの…兄さん、あたし…ずっと謝りたくて
ひどいことを言ってしまって申し訳ありませんでした
そんなことを気にしていたのか、大丈夫だよ、僕を気遣ってくれたんだろう。
兄さん…
僕はもっと強くならないと、全ての穢れを切る。根絶やしにして見せる。そうだろう、千代。
え…あ…はい
何かおかしかった
こんなに冷たい声を発する人だっただろうか
その違和感を程なくして最悪の現実となる
ある晩、物音で目覚めた私は道場へと向かった
そこで見ったのは霧人兄さんが祖父を切り殺した瞬間だったんだ
兄…さん
許せ…ない、憎い、穢れが憎い
何をしているんですか
妹は死んだ、穢れに取り憑かれて死んだんだ
え…
千代、答えてみろう
あ…兄さん、その目、穢れに心を許してしまったんですか
何のための力か?何のために今まで修行してきた?穢れを斬り払うのが綾咲家ではないの
なぜ殺めは知らなくてはいけなかったんだ
この力は無意味だ 意味がないものを全て切り捨ててしまいばいい
違い、違います、兄さん!
お前も無意味だ
死ね!
やめて
死ね——
やめて、兄さん、兄さん!醒まして!
霧人兄さんは穢れに取り憑かれていた
全ての穢れを斬り払いたい
その強い思いは妹の死によって暴走し
穢れの侵入を許してしまったのだ
正気を失った兄さんはゆらり弔い
斬りかかってきた
私はまだ未熟だった
私よりも遥かに手練れ
防ぐだけでも必死だった
そして穢れを斬り払うだけではなく
彼もろとも貫ぬいてしまったのだ
兄…兄さん、あたし…
徐々に…心の散らしていくくらいなら、今、ここで…お前に斬り払って欲しい。
あたし…
早く…頼む、千代。
あ——
ありがとう、千代。
私は大切な人をこの手で殺めた
私はもっと強くならないといけない
もう誰も失わないために
『灰の記憶』LRC歌词
[00:17.081]消し去ってしまいたい記憶がある
[00:20.710]忘れてしまいたいのに
[00:22.727]それは叶わない
[00:25.006]思い出すたびに 息ができなくなる
[00:30.370]少し思い出話をしよう
[00:35.143]私がまだ当主になる前
[00:38.111]共に修行をしていた霧人と言う男がいた
[00:43.157]兄でした
[00:45.326]私は霧人兄さんと呼んでいた
[00:49.998]強くて優しくて 大好きだった
[00:55.180]私には兄弟がいなかったから
[00:58.003]優しくしてくれる霧人兄さんを慕っていた
[01:02.800]憧れだったのか 恋というものだったのか
[01:07.232]今ではもうよく分からない
[01:10.500]兄さんは病を抱えた妹のために
[01:14.608]毎日修行と仕事に明け暮れていた
[01:18.651]そんな兄さんに私はある日ひどいことを言ってしまったんだ
[01:28.221]霧人兄さん
[01:29.668]あ…あ
[01:31.118]最近顔色がよくありませんね
[01:33.969]大丈夫だよ
[01:35.505]大丈夫じゃありません
[01:37.899]妹に比べたら、辛いことなんて何もないよ
[01:43.955]兄さんは妹さんのことばかり
[01:48.056]千代、どうしたんだ
[01:50.705]あたしが本当の妹なら、兄さんにこんなに迷惑かけないのに
[01:56.075]千代…
[01:58.772]申し訳ありません、私…頭を冷やしてきます
[02:07.006]その翌日から兄さんは道場に来なくなった
[02:12.593]私は後悔した
[02:14.860]私は兄さんの妹に嫉妬していたんだ
[02:19.234]そんなつまらない理由で
[02:21.796]兄さんと妹さんを傷つけってしまった
[02:27.322]一ヶ月が経った頃
[02:29.914]霧人兄さんは再び道場に顔を出すようになった
[02:43.964]霧人兄さん
[02:45.746]ああ、千代か、元気だったか
[02:49.801]あ、はい。あの…兄さん、あたし…ずっと謝りたくて
[02:58.134]ひどいことを言ってしまって申し訳ありませんでした
[03:04.135]そんなことを気にしていたのか、大丈夫だよ、僕を気遣ってくれたんだろう。
[03:10.705]兄さん…
[03:13.217]僕はもっと強くならないと、全ての穢れを切る。根絶やしにして見せる。そうだろう、千代。
[03:24.735]え…あ…はい
[03:30.120]何かおかしかった
[03:32.669]こんなに冷たい声を発する人だっただろうか
[03:37.338]その違和感を程なくして最悪の現実となる
[03:43.967]ある晩、物音で目覚めた私は道場へと向かった
[03:50.340]そこで見ったのは霧人兄さんが祖父を切り殺した瞬間だったんだ
[04:00.307]兄…さん
[04:02.643]許せ…ない、憎い、穢れが憎い
[04:12.665]何をしているんですか
[04:16.778]妹は死んだ、穢れに取り憑かれて死んだんだ
[04:25.180]え…
[04:27.212]千代、答えてみろう
[04:30.678]あ…兄さん、その目、穢れに心を許してしまったんですか
[04:38.355]何のための力か?何のために今まで修行してきた?穢れを斬り払うのが綾咲家ではないの
[04:49.447]なぜ殺めは知らなくてはいけなかったんだ
[04:55.747]この力は無意味だ 意味がないものを全て切り捨ててしまいばいい
[05:03.702]違い、違います、兄さん!
[05:06.552]お前も無意味だ
[05:12.800]死ね!
[05:20.315]やめて
[05:20.785]死ね——
[05:21.384]やめて、兄さん、兄さん!醒まして!
[05:25.805]霧人兄さんは穢れに取り憑かれていた
[05:30.643]全ての穢れを斬り払いたい
[05:34.137]その強い思いは妹の死によって暴走し
[05:38.838]穢れの侵入を許してしまったのだ
[05:42.621]正気を失った兄さんはゆらり弔い
[05:45.735]斬りかかってきた
[05:48.088]私はまだ未熟だった
[05:50.805]私よりも遥かに手練れ
[05:53.572]防ぐだけでも必死だった
[05:56.824]そして穢れを斬り払うだけではなく
[06:01.304]彼もろとも貫ぬいてしまったのだ
[06:06.172]兄…兄さん、あたし…
[06:16.928]徐々に…心の散らしていくくらいなら、今、ここで…お前に斬り払って欲しい。
[06:28.745]あたし…
[06:32.340]早く…頼む、千代。
[06:39.238]あ——
[06:47.844]ありがとう、千代。
[06:55.948]私は大切な人をこの手で殺めた
[07:01.260]私はもっと強くならないといけない
[07:06.862]もう誰も失わないために