碧落 柔らかく滲んだ墨の色が、水の中へ溶けて行く様に消えてしまいたいと願いながら。 残り香を抱いては、もう戻れぬ。 日々を想い涙しては、淋しさに打ち震える―――。 遠く、遠くへと消える。 認めた手紙は何処へ。 宛名のない文字の端でこゝろ殺すのは、愛しているから―――。 震える指先で何度も綴れば紅く流れる。 白景に映える、その色彩だけが温かく―――。 色褪せた思ひ出が霞む、陽溜りの中。 紺碧の彼方へと飛んだ紙飛行機。 畳なわる弱い声は鉛の壁に軋んだ。 昔日に置き去りになった優しい微笑みは、ここでずっと咲いている―――。 遠く、遠くへと消える。 認めた手紙は何処へ。 宛名のない文字の端でこゝろ殺すのは、愛しているから―――。 あなたの言葉が私の筆を走らせて、思いの丈を綴らせる あゝ、青さの中で砕け散る枯れた言の葉。 碧落の中へと消えて行く―――。 終わり