自由の日々 まだ中学生だった僕は仲間の家を転々として歩いた。 好都合なことに、この頃は悪い連中と付き合うようになっていて、寝泊りする場所に困ることはなかった。 連中と一緒にいることが自分が孤独なことを忘れさせてくれた。 暴走族の集団の中で、町を突き抜ける快感にも酔いしれた。 気に入らない奴はぶん殴ればすかっとして爽快な気分になった。 金がなければ盗めばよかった。 集団で行動すれば怖いものは何もないことを知った。 まだ下っ端だったが、上に素直に従ってさえいれば守ってもらえた。 これが自由というものなんだ。 僕は心の底からそう思えた。 ある時、仲間の一人から捜索願いが出ていることを聞かされた。 「お前の親ずいぶん捜してるみたいだぜ。」 とっさに兄の顔が思い浮かんだ。 「はっ、関係ねえよ」 僕は無免許のバイクを思いっきり走らせた。 家族のことはもう考えたくなかった。 家に帰らないまま、年月は瞬く間に過ぎ、僕はとうに二十歳を超えていた。 この頃は暴力団の構成員にまでなっていた。 とにかく、上の命令に従ってさえいれば生きていける。 それが唯一人生で学んだことだった。 そのために、どんな悪いことに手を染めても、心はちっとも痛まなかった。 いじめられっ子だった自分がいじめる側に回っている。 そんなことを考えては苦笑した。 「俺なんかには、お似合いの人生だ」酒を飲んで酔った時の口癖になっていた。